世界で注目される日本の漢方医学 保険はずし議論は時代の流れに逆行
現在、私たちが受ける「医療」の中心は、欧米から入ってきた西洋近代医学だ。しかし、西洋医学も万能ではない。そもそも、医療はすべて不確実なものだが、西洋医学で治らない病気の改善を漢方医学に求める人もいる。身近な例でいえば、風邪をひいたときに葛根湯をドラッグストアなどで自費購入している人もいるだろう。
その漢方薬だが、多くは健康保険が使えるということをご存知だろうか。
エキス剤148種類だけではなく 生薬200種類も健康保険の対象
漢方薬が、はじめて健康保険の適用を受けたのは1967年。当時の医師会長、武見太郎氏の働きかけによって、まず4種類の漢方薬が健康保険に認められ、1976年に一気に適用が拡大された。
西洋医学は検査などで病気の原因をみつけ、その原因を薬や手術で直接的に取り除くことで病気を治そうとする。一方、漢方医学は自然治癒力や抵抗力を高めて病気を治していくのが特徴。その患者の体質や自覚症状にあった方法で、身体全体の調子を整え、間接的に病気を治していこうとする。
そうした手法の違いによって、「漢方薬を飲み始めたら更年期障害の症状が軽くなった」「アトピー性皮膚炎のかゆみが漢方薬でとれた」という例はあとをたたない。
漢方薬の原料は、当帰(とうき)や麻黄(まおう)などの自然由来の植物で、これを乾燥させたものを「生薬(しょうやく)」という。昔の人は、この生薬を組み合わせて煎じて服用していたが、現在は生薬のエキスを抽出して粉末状にしたエキス剤も増えている。
中には、健康保険ではエキス剤しか利用できないと誤解している人もいるようだが、生薬そのものも認められている。現在、健康保険の適用がある漢方薬は、エキス剤が148種類、生薬は約200種類まで増えており、かかった費用の3割(70歳未満の場合)の自己負担で利用できる。
ただし、街中にある漢方薬局などで、医師免許のない店員に漢方薬を処方してもらっても健康保険の対象にはならない。化学薬の処方と同様に、まずは病院や診療所で診察を受け、医師に漢方薬の処方せんを書いてもらう必要がある。
とはいえ、どこの病院や診療所でも漢方専門医がいるわけではない。漢方薬を処方してもらいたい場合は、「漢方医療センター」といった診療科がある病院を選んだり、インターネットなどで漢方専門医が開業している診療所などを探してみよう。また、漢方専門の診療所には保険診療を行なっていないところもあるので、これも事前に確認しておいたほうがいいだろう。
独自の発展をとげた日本の
漢方医学に世界が注目している
日本の漢方医学は中国の「古代中医学」を基礎に改良され、独特の発展をとげた我が国独自の伝統医療である。古代中医学が理論的で複雑なのに対して、漢方医学は江戸時代に実用が重んじられてシンプルになり、庶民にも使われるようになった。
医師免許にも違いがある。中国や韓国の医師免許は、漢方を用いる伝統医学、欧米発祥の西洋医学にわかれており、ひとりの医師が両方の医療を行うことはできない。
一方、日本はふたつの医師ライセンスは存在しない。これは明治時代にいったん漢方医学が否定され、西洋医学が医療の中心になったからだ。そのため、漢方医学は一時衰退したものの、その知識と技術は脈々と受け継がれており、日本ではひとつの医師免許で西洋医学と漢方医学を処方できる特異な環境ができあがった。現在、83.5%の医師が漢方薬を処方しており、それが相乗効果となって治療効果を高めることにつながっているという。
たとえば、慶應義塾大学病院では、大腸がんの手術後に大建中湯(たいけんちゅうとう)という漢方薬を投与している。その治療効果について、同大学漢方医学センターの渡辺賢治准教授は次のように解説する。
「大建中湯は、山椒(さんしょう)、乾姜(かんきょう)、人参(にんじん)、膠飴(こうい)といった生薬を配合した漢方薬です。これを用いると消化機能の回復が早まり、大腸がん手術後の腸閉塞の発症が減少します。個人差もありますが、入院日数も平均3.5日短縮されており、国民医療費の削減にもつながっています。こうした経験から、慶應義塾大学病院では、大建中湯の投与は大腸がん手術の標準的な治療計画に入っています」
アジアで発展してきた伝統医学は、現在では欧米でも利用者が増えている。中でも、西洋医学と漢方医学を融合させて治療実績をあげている日本の医療は注目されており、欧米諸国だけではなく、東洋医学思想のある中国や韓国からも留学生が訪れるという。
世界保健機関(WHO)でも、25年ぶりに改訂する国際疾病分類(ICD)に伝統医学を組み込まれることが計画されている。これを機に、世界で伝統医学に関する調査や研究、臨床試験、教育が進められる動きが出てきている。
財源を理由に再三持ち上がる
漢方薬の健康保険はずし
世界のこうした流れに逆行するように、日本国内での漢方医学への風当たりは強く、存続を危ぶむ声も上がっている。その理由のひとつが漢方薬の保険はずしの動きだ。
記憶に新しいのは2009年11月に行われた行政刷新会議の事業仕分けで、仕分け人たちによって漢方薬は保険適用から外すべきという結論が下された。
「漢方医学は、患者の体質や症状を丁寧に問診した上で、その人に合った治療を行います。症状が同じ人でも、体質ごとに異なる漢方薬が処方されるので、医師の指導の下に服用しないと副作用を引き起こす可能性もあります。それなのに、健康保険の対象から外して薬局で自分の判断で買えばいいとする行政刷新会議の判断は、国民の健康をないがしろにしています」(渡辺医師)
日常的に漢方薬を服用して病気治療をしている患者にとって、漢方薬の保険はずしは負担増にもつながる。医療の実状を無視し、漢方薬を「無駄」と決め付けた行政刷新会議の判断には反対運動が巻き起こり、3週間で92万筆以上の署名が集まった。その結果、2010年度はかろうじて漢方薬の保険適用は継続されることになった。
漢方薬の保険はずしは事業仕分けに始まったことではなく、1993年、1998年にも財源問題を理由に俎上にのぼっている。現在、政府では「給付の重点化?効率化」をキーワードに「社会保障と税の一体改革」が話し合われているが、再び漢方の保険はずしの議論が起こる可能性も否定できない。
西洋医学よりも漢方医学の医療費が高いわけではない。高度な検査機器を使うわけではなく、丁寧な問診を中心とする漢方医学はむしろ費用はかからない。そもそも公的医療保険で使われる医薬品に占める漢方薬の割合は1%程度なのに、なぜ漢方薬が保険はずしのターゲットになるのだろうか。
また、原材料である生薬の高騰も漢方医学の存続が危ぶまれる理由だ。
漢方薬の材料である生薬の国内自給率はわずか15%で、ほとんどを中国からの輸入に頼っている。その価格は、中国の経済発展や人件費の上昇によって、このところ値上がりを続けている。
ところが、健康保険で決められている漢方薬の薬価は、年々、下がっていく仕組みになっている。企業も採算に合わない事業はできないため、生産を中止する品目が出たり、廃業するメーカーも出ており、安定供給が難しくなる可能性もある。
どんな医療技術も健康保険という支払いシステムがなければ、その恩恵を国民みんなが享受することはできない。
財源を理由とした安易な保険はずしの議論や薬価の引き下げは、国民の健康と、この国に脈々と受け継がれてきた伝統医療を、同時に失うことにつながることにはならないだろうか。
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备受世界关注的日本汉方医学
讨论将汉方药排除出保险却背离时代潮流
现在,我们所接受的“医疗”是以从欧美传来的西方近代医学为中心。然而,西医并非无所不能。医疗本来就有着诸多的不确定性,也有人希望通过汉方医学来治疗西医无法治好的病。拿我们身边的例子来说,有的人感冒时就自己去药店买葛根汤回来煎服。
大家知道吗?很多的汉方药是被纳入健康保险的,可以使用健康保险报销。
不仅包括148种浸出物制剂
还有200种生药也被纳入健康保险
汉方药最初被接受并适用于健康保险是在1967年。这归功于当时的医师会长——武见太郎的努力推动,刚开始只有4种汉方药被承认纳入健康保险,到1967年范围得到广泛扩大。
西医是通过检查等手段来查出病因,继而通过药物或是手术直接排除病因来治病。而汉方医学的特点在于通过提高人体机能的自身恢复能力和抵抗力来治病。通过适合患者体质及其自觉症状的方法来调整身体状态间接治病。
由于这种治疗手法的不同,而呈现了很多意想不到的效果。如“吃汉方药以后,更年期症状减轻了。”“汉方药可以祛除遗传性皮炎造成的奇痒”,诸如此类的例子非常多。
汉方药的原料是当归、麻黄等一些自然植物,干燥后称为“生药”。古代人搭配各种生药煎服,而现在通过提取生药的浸出物制成粉末状的浸出物制剂逐渐增多。
有人误以为健康保险只能使用浸出物制剂,其实生药也被承认列入了其中。现在,适用于健康保险的汉方药增加到148种浸出物制剂和大约200种生药,未满70岁的人所花费用只需自己承担30%。
不过,街道的汉方药房,没有医师资格证的店员开的汉方药是无法纳入健康保险的。跟化学药的处方药一样,首先需要在医院或诊疗所检查,然后请医师开汉方药药方。
虽说如此,不过也不是所有的医院或诊疗所都有汉方专家医师。如果你想开汉方药,就选择设有“汉方医疗中心”诊疗科的医院或通过网络等方式查找汉方专家医师开的诊疗所。另外,在有些汉方诊疗所进行的治疗是无法报销保险的,所以最好事先确认清楚。
取得独立发展的日本汉方医学备受世界关注
日本的汉方医学是在中国的“古代中医学”的基础上通过改良,取得独立发展的日本特有的传统医疗。古代中医学理论性强且很复杂,而汉方医学早在江户时代就开始注重实际应用,并简化,在普通老百姓之中广为应用。
日本的医师资格证也有所不同。中国、韩国的医师资格证分为使用汉方的传统医学和发祥于欧美的西医两种,一名医师不能同时进行这两种医疗。即不能同时拥有这两种资格证。
而日本不存在两种医师执照。这是因为明治时代汉方医学曾一度被否定,使西医成为了医疗的中心。因此,汉方医学虽曾一时衰退,但相关知识和技术却得到世代传承,日本从而形成了一个医师执照可以同时运用西医和汉方医学来治疗这样一种特殊的社会环境。现在,83.5%的医师开汉方药药方,从而提高治疗功效达到更佳效果。
比如,庆应义塾大学医院,大肠癌手术后会让病人服用汉方药——大建中汤。该大学汉方医学中心的渡边贤治副教授就其治疗效果做了如下说明。
“大建中汤就是用山椒、干姜、人参、胶饴这些生药配制而成的汉方药。以此来加快恢复消化功能,减小大肠癌手术后发生肠道闭塞的概率。虽然每个人的体质不同康复程度不同,不过住院天数平均都会缩短3.5天,可以减少国民的医疗费开支。因有这样的成功经验,庆应义塾大学医院就将大建中汤的投药列入大肠癌手术的标准治疗计划中。”
现在在欧美,也有越来越多的人利用亚洲发展至今的传统医学。其中,融合西医和汉方医学并取得医疗成效的日本医疗备受关注,不仅仅有欧美各国,还有来自中国和韩国有着东洋医学思想的留学生拜访。
世界卫生组织也计划将传统医学纳入25年来将实行改订的国际疾病分类(ICD)中。借此契机,在全世界推动传统医学相关的调查、研究、临床试验、教育的发展。
以财政来源为由再三提及
汉方药的排除出健康保险之列
正如同与世界性的时代潮流背道而驰那样,日本国内汉方医学所受的阻力很大,甚至有人担心汉方医学是否能持续传承下去。其中一个原因是汉方药将被排除出保险之列的动向。
记忆犹新的是2009年11月举行的行政改革会议的事业分类中,相关人员已下结论认为汉方药应该被排除出保险适用范围。
“汉方医学是通过对患者的体质、症状的问诊,进行适合这个人的治疗。即使症状相同,个人体质不同会开不同的汉方药,所以如不按医师的指导服用可能会引发副作用。然而,行政改革会议将汉方药排除出健康保险的范围认为人们根据自己的判断去药店买就可以了,这样的判断是对国民的健康视若无睹的行为。”(渡边医师)
对于平常服用汉方药来治病的患者来说,汉方药被排除出保险范围无疑增加了他们的负担。于是掀起了反对运动,以反对无视医疗实况,擅自对汉方药进行判断决定的行政改革会议,3周汇集了92万多人的亲笔签名请愿书。结果,2010年总算是继续维持着汉方药在保险中的适用范围。
汉方药被排除出保险范围并非从事业分类开始的,早在1993年,1998年就以财政来源为由对汉方药进行过讨论。现在,政府正在探讨商量“投保者利益的重点化和效率化”为主线的“社会保障与税的一体化改革”,然而不可否定可能会再次引发对汉方药的排除出保险的讨论。
并非汉方医学的医疗费比西医高。汉方医学不使用高端检查机器,而是以问诊为主,反而花销不大。本来公费医疗保险所用的医药品中汉方药只占1%,为什么偏偏是汉方药被排除出保险之列呢?
另外,作为原料的生药的价格高涨也是危及汉方医学持续发展的一个理由。
汉方药的材料——生药的日本国内供给率仅为15%,大部分都依靠从中国进口。随着中国的经济发展和劳务支出的增多,近来其价格在持续上涨。
可是,健康保险中所规定的汉方药药价却在年年下降。企业不会做没有盈利的生意,因此有些企业停止生产部分汉方药,也有一些厂商停产,可能导致难以提供稳定的市场供给。
无论医疗技术怎么样,如果没有健康保险这一支付体系支撑,国民是无法享受其带来的恩惠的。
以财政来源为由轻易地讨论将汉方药排除出保险之列或降低药价,会不会有损国民健康的同时也失去这个国家世代传承的传统医疗呢?
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