「昭和二十二年の井伏さん」という短い一文が井上ひさしさんにある。作家の井伏鱒二がその年に井上さんの本家筋の造り酒屋にやってきた。のぞき見ると「丸顔の人がにこにこしながら盃を口に運んでいた」そうだ。
井上廈先生写有一篇短文,题为“昭和二十二年的井伏先生”。说是那一年,作家井伏鳟二来到了井上家嫡传的自制酒店。往里一打量,只见是“一个面孔圆乎乎的人正笑呵呵地端着酒盅往嘴里送呢”。
お酒を傍らに、土地の文学青年らが持ち込んだ原稿にすこぶる的確な評を与えて、宵の口に別の町へ発ったという。だが、その井伏さんは真っ赤な偽者だった。白いご飯とお酒を目当てに「偉い先生」になりすまし、田舎に出没する者が当時は珍しくなかったらしい。
喝酒的间隙,还对当地的文学青年带来的原稿进行了颇为详实的点评,说是趁着天还不太黑,还得再上别处去一趟。然而,就是这位井伏先生是个彻头彻尾的冒充货。为了白米饭和酒菜,装成是个“了不起的先生”,在乡间到处乱窜,这种人在当时并不少见。
どこか憎めない「にせ文士」と違い、警視庁などが逮捕したニセ医師(43)は深刻だ。東京や長野、神奈川の医療機関で1万人以上がこの人物の健康診断を受けたと見られる。命にかかわる見落としがなかったか心配になる。
总觉得与这种让人恨不起来的“假文人”不同,警视厅等政府机关逮捕的假医师(43岁)问题比较严重。据推测,在东京以及长野、神奈川等地的医疗机构中约有1万多人接受过此人的健康诊断。令人倍感担忧的是不知道有没有发生过关乎性命的误诊。
同姓の医師になりすました男は、独学で知識をかじったそうだ。長野では企業に出向く形で健診をこなし、問診や触診もした。明るくて好評だったというから皮肉である。
据说,装扮成同姓医师的这名男性通过自学掌握了点毛皮。在长野县以借调至企业的形式从事健康诊断,而且也进行一些问诊及触诊。颇具讽刺意义的是,因为本人性格开朗,据说反映还不错。
なりすましといえば、イラストレーターの南伸坊さんは有名人に顔を似せるのを得意技(わざ)にする。その写真を集めた『本人伝説』(文芸春秋)の宣伝文句は言う。「自分ひとりが本人と思い込んでいる虚をついて、著者が本人になりすます」
说到乔装改扮,听说插图画家南伸坊先生将模仿名人面相作为其最拿手的本事。他在汇集了这些照片的《本人传说》(文艺春秋出版)的宣传文章中谈到,“自己一个人制造一个被认为就是其本人的假象,于是,作者就变成了该本人”
伸坊さんなら光栄だが、どこでもう一人の自分が大手を振っているか、悪事を働いているか分からない。オウム逃亡犯もそうだった。その危うさをネットが増幅する。有名無名を問わず、虚をつかれやすい時代になった。
尽管伸坊先生觉得很光荣,可是也有令人担心的一面,不知道在某处是不是还有一个自己在堂而皇之地存在着?也不知道他干没干坏事?奥姆真理教的逃犯也是如此。网络增加了他的危险性。不管有名无名,目前是一个容易造假的时代。