雑草覆う田、雨頼み フィリピン―世界最大の輸入国 コメのゆくえ(1)
カルロス?レオナルドさん(63)の2ヘクタールの田は、干上がっていた。雑草の下の白っぽい土は硬くしまり、足でけっても崩れない。
「水さえあれば」。カルロスさんの視線の先約50メートルほどに小川がある。そこに小さなせきを作りポンプを取り付ければ、数人の農家で二期作ができる。だが、彼らにその資金はない。
カルロスさんの田は雨頼み。雨期に入る6月から田植えを始め、11月に収穫した後は何も植えられない。
フィリピンのマニラ首都圏から北へ車で約1時間半のブラカン州サンイルデフォンソ町。首都近郊で交通の便がいいこの地域でも灌漑(かんがい)は行き届いていない。
カルロスさんの田からとれるもみは1ヘクタール当たり2.5トン。政府が運営する比稲作研究所によると、全国平均より1トン少ない。カルロスさんが稲作にいそしんできた45年間、ほとんど変わっていない。
画期的な高収量品種の普及でアジアの田からのコメ収穫量を一気に引き上げた「緑の革命」は、比でも1970年代に見られたが、カルロスさんの田では若干、収穫量が増えただけだ。コメの売り上げは年間6万ペソ(約11万5千円)程度で、5人家族が生活するには足りないという。
「『緑の革命』も水不足で、この地域に大きな変化を起こせませんでした」。町の農業指導員レイナンテ?ホソンさんもあきらめ顔だ。町は農家に灌漑用の電動ポンプを補助する事業を進めるが、カルロスさんの田の灌漑のために小川を工事する予算はない。
比は世界最大のコメ輸入国だ。フィリピン人の主食はコメ。徐々に生産量も上がっているが年2%の勢いで増える人口の腹を満たすには足りない。2008年の世界的な食糧危機の際、比の輸入増がコメの国際価格を上昇させ、危機の引き金を引いたと言われた。比のコメ需要はいまも国際的な食糧安全保障の不安定要素であり続けている。
だが、人口急増、行政や農民の資金難による灌漑などの設備不足、洪水などの災害、都市化による農地減少、農地改革の足踏み、行政の腐敗――。互いに複雑にからみ合ったコメ不足の原因は、すぐにはほどけそうにない。
■強いイネ、新「緑の革命」に期待
そんな中で国際的な注目を浴びている田が、マニラ首都圏から南へ車で約1時間半の所にある。
約1カ月間、まったく水を与えられず、ひび割れた土の上にイネが力強く伸びていた。穂先には、もみが堅く結びつつある。
日本や欧米が運営資金を拠出するラグナ州ロスバニョスの国際稲研究所(IRRI)の実験田に育つ、干ばつに強い新品種だ。
かつてIRRIが開発しアジアの緑の革命の原動力となった品種「IR8」は収量は高いが、厳しい環境に弱い欠点があった。将来の食糧危機に備えて、IRRIは新たな緑の革命を目指している。
「狙いは灌漑設備のない地域でもよく育つイネを作ること」。干ばつ耐性イネの開発を主導するアルヴィンド?クマル博士は言う。
ここ4年間、現地での試験栽培のために比国内のほかインド、ネパールに種を送り、近くバングラデシュにも届く。栽培した農家から、水がほとんどない田への直(じか)まきでも育つという報告があったという。
水害に強い品種の開発も進む。先端まで完全に水につかった状態が2週間続いても育つ「潜水種」も実用段階にこぎつけた。
国連は、現在約69億人の世界人口が2050年には91億人以上になると予測。このため、国連食糧農業機関(FAO)は同年までに途上国での食糧需要は現在の2倍となるのに対し、世界の耕地面積はいまより5%増にとどまり、アジア地域では都市化などで、むしろ減少する可能性がある、とみている。
FAOの小沼広幸アジア太平洋地域代表は「将来の需要に見合う食糧の確保には耕地面積当たりの収穫を増やすしかない。悪条件で生育する品種の開発の重要性はどんどん増しており、IRRIなどによる研究に期待している」と話す。(マニラ=四倉幹木)
〈フィリピンのコメ〉 輸入量は、08年に国内消費量の約2割に当たる240万トンに上るなど世界最多。国内生産量も少しずつ増えてはいるが、約9400万人の国民は生活向上と共に1990年代半ばからイモ類やトウモロコシよりもコメを多く食べるようになり、慢性的な不足が続いている。政府は2013年にコメの完全自給を目指し農業分野への投資に力を入れるが、農業専門家の間では「13年までの実現はかなり厳しい」との見方が一般的だ。
今年2月、世界の主要食料価格指数は1990年に統計を取り始めてから最高値を更新した。食糧危機への不安が高まる中で、アジアのコメ事情を探る。
|
菲律宾——世界最大的粮食进口国 农田杂草丛生、靠雨吃饭
Carlos Leonard(63岁)的2公顷农田全都干涸了。杂草下面发白的土硬邦邦的,怎么踢也踢不散。
“只要有水就行了”Carlos说道。顺着Carlos的视线往前看,约50米处有一条小河。只要在那儿筑一道坝,安上一台水泵,几户农家就可以种双季作物了。但是,他们没有资金。
Carlos的田靠的是雨水。从6月进入雨季开始插秧,11月收割,之后便什么都种不了。
从菲律宾首都马尼拉驱车向北行驶大约一个半小时,我们来到布拉干州圣伊尔德丰索镇。即便是首都近郊交通便利的该地区,灌溉工程也没有到达这里。
Carlos的农田每公顷收获2.5吨的稻谷。据政府管理的菲律宾水稻研究所称,这个数据比全国平均值少了1吨。在Carlos埋头苦干的45年种稻生涯里,单产几乎不变。
据说,因划时代的高产品种的普及,亚洲农田的大米收获量一举攀升。虽然在上世纪70年代就在菲律宾看到了这场“绿色革命”,但Carlos的农田也仅增产一些而已。大米的销售额一年6万比索(约11万5千日元),满足不了一家5口人的生活。
“因为缺水,‘绿色革命’并没有给该地区带来多大的变化。”镇农业指导员Reinante?Hoson的脸上写满无奈。镇里开展了为农家提供灌溉用电动水泵的活动,但没有为Carlos的农田灌溉搞小河筑坝的预算。
菲律宾是世界最大的大米进口国。菲律宾人的主食是大米。虽然产量也以一年2%的速度上升,但还是无法让增长的人口吃饱饭。2008年世界粮食危机的时候,菲律宾进口的增长导致了国际大米价格的上涨,被认为是危机的导火索。菲律宾的大米需求现在仍然是国际粮食安全保障的不稳定因素。
然而,人口激增、行政上的资金困难与农民缺少资金导致的灌溉等设备不足、洪水等自然灾害、城市化带来的土地减少、土地改革的停滞、行政的腐败——这些互相交织导致大米短缺的复杂原因,是一个不太可能立即就解开的结。
■期待顽强的稻谷品种 期待新“绿色革命”
在这种情况下,从首都马尼拉驱车向南约1个半小时的地方,有一块受到国际关注的农田。
已经有一个月了,完全不给这块农田灌水,田土干裂了,稻子却顽强地生长着。稻穗顶端正结着饱满的粒粒稻谷。
这是由日本和欧美出资、在拉古纳州洛斯巴诺斯国际水稻研究所(IRRI)的试验田培育出来的耐干旱新品种。
IRRI曾经开发了成为亚洲绿色革命动力的品种“IR8”,产量高,却不适应恶劣的环境。为了应对未来的粮食危机,IRRI正朝着新的绿色革命而努力。
负责抗旱稻开发的Aruvindo ?Kumar博士指出,“我们的目标是培育出在没有灌溉设备的地区也能生长的稻子。”
博士还告诉我们,近四年来,为了在现场进行栽培试验,除了菲律宾,研究所还把稻谷种子送到印度、尼泊尔,以及附近的孟加拉国。据现场报告,栽培的农家把种子直接播撒到几乎没有水的田里也能生长。
耐涝品种的开发也在推进。有一个“潜水品种”也进入了应用阶段,即使稻穗顶端完全没入水中,这种状态持续二星期也能生长。
联合国预测,目前约69亿的世界人口到2050年将达到91亿以上。因此,联合国粮农组织(FAO)认为,在2050年之前发展中国家的粮食需求将是目前的二倍,而世界耕地面积只比现在增加5%,亚洲地区因为城市化等原因,耕地面积反有减少的可能。
联合国粮农组织亚洲太平洋地区代表小沼广幸指出:“为了满足未来的粮食需求,只有提高单位耕地面积的产量。开发在恶劣条件下生长的品种愈发重要,我们期待IRRI的研究。”(马尼拉 四仓干木)
(菲律宾的大米)进口量在08年上升至240万吨,相当于国内消费量的大约20%,居世界首位。由于生活水平的提高,从上世纪90年中期开始,相比薯类及玉米等,约9400万的国民更多地食用起了大米,大米的国内生产量虽也有缓慢增加,但仍然长期短缺。政府加大了对农业领域的投资,目标是到2013年实现大米的完全自给自足。然而,农业专家们普遍认为“要实现2013年的目标是相当严峻的”。
今年2月,世界主要食品价格指数达到最高值,刷新了1990年开始的统计数字。由于担心粮食危机而对其日益关注,对亚洲稻米的情况进行探索。
|