香り放つ最高級品 タイ―世界最大の輸出国
バンコクの北75キロ、アユタヤ県にある食品輸出大手「CPインタートレード」。七つの巨大倉庫に20万トンのコメが貯蔵されている。日本製の機械で小石や不良米を取り除き、アフリカや欧州へ運ばれる。
スメス?ラオモラポーンCOO(最高執行責任者)は「世界がタイ米に求めているのは品質。だから、高くてもどんどん売れます」と話す。
タイは1982年からコメの輸出量1位を続ける。2009年は約900万トンに上った。世界の貿易量の約30%を占める。
日本は94年、大不作でタイ米を緊急輸入した。短粒種の日本米と違い、長粒種のタイ米は「においがきつい」「パサパサする」と敬遠され、大阪では大量に投棄される事件まで起きた。
だが、この「におい」こそタイ米の強みだ。
トップブランド「ホンマリ米」はタイ語で「ジャスミンの香り米」という意味。世界的には「ジャスミン米」と呼ばれる。タイ東北部トゥンクラロンハイ高原の痩せた土地で、水や肥料を制限して栽培すると、甘く芳しい香りを放つ。
価格は輸出2位のベトナム米の約2倍だが、長粒種の最高級米として、中国南部や東南?南アジアで人気だ。輸出量を急増させているベトナムや隣国のカンボジア、ミャンマー(ビルマ)とは価格の安さでは戦えないため、タイ米は品質で勝負している。
悩みのタネは、低価格米の混入や不正表示。生産者から中間業者、販売業者まであらゆる過程で行われているとされる。
タイ農業省によると、昨年、中国の小売店で調査したところ、タイ製ホンマリ米100%として売られていた商品327点のうち、DNA調査で他品種の混入なしと確認されたのはわずか24点だったという。
政府は生産地情報などの表示を義務づける「トレーサビリティー」制度の確立を目指すなど対策に躍起だ。ジャスミン米の名称はベトナムや米国産の別種にも用いられるため、「トゥンクラロンハイ産のホンマリ米」という原産地表示を欧州連合(EU)に登録しようと働きかけてもいる。
「世界的ブランド」としてのタイ米は08年の世界的食糧危機の際、さらにその存在感が高まった。
インドやベトナムなどがコメの輸出制限を打ち出す中、タイのコメ輸出は減らなかったからだ。コメの国内価格の上昇が政情不安に直結する国と比べ、経済成長し、十分な生産力があるタイは余裕があった。タイのコメ生産の行方は、世界の食糧安全保障を左右しかねない。
■支える小作農家に届かぬ富
世界を支えているといえるタイのコメビジネス。だが、農家にはその富は十分届いていない。
CPインタートレードの倉庫からほど近い農村で、ブンチュー?チャナスさん(67)は田んぼに突っ伏し、叫んでいた。
「全部食われた! 何も残っていない!」
タイ中部の農村では昨年来、害虫が大量発生した。ブンチューさんによると、224アールの田んぼの平均収量は13トンだが、今年は2トンしか見込めないという。「赤字だ。また借金が増える。もう稲作をやめないといけないかもしれない」
1度の不作で追い込まれるのは、借地代を支払わないといけない小作農家だからだ。タイ農業経済局によると、経済発展でタイの平均年収が2002年から09年にかけて倍増したのに対し、農家世帯は農閑期の出稼ぎをあわせても1.6倍。土地を売って小作人となる農家は急増しており、全体の8割は借金を抱えているという。
プラサート?ゴサルウィトラ米局長は「農業人口は20年で半減した。都会の出稼ぎの方が簡単に収入になる。特に若い世代が農業に魅力を感じていないのは日本などと同じだ」と話す。
バンコクでは、米価引き上げや稲作への補助を求め、数百人規模の農家が集結するデモが頻発。大量の農村票は、5月にも実施される議会解散で近づく総選挙も左右する。タイ農民協会のウィチエン?プアンラムチアック副会長(74)は「タイ米が他国に負けるとは思わない。だが、政府の支援なしに農民が稲作を続けられるとも思わない」と話した。(古田大輔)
◇
〈タイ米〉 長粒種のインディカ米。見た目は細長く、炊いたときに粘り気が少ない。パサパサとした食感が特徴で、カレーやピラフに合う。沖縄の泡盛の原料にも用いられる。インディカ米は東南アジア、中国南部、インドで広く栽培されており、世界的には、短粒種のジャポニカ米(日本米)よりも広く食べられている。 |
泰国——世界最大的大米出口国
释放香味的顶级品种
曼谷以北75公里的大城府县有一个食品出口大公司“CP Intertrade ”。7个巨大的仓库里储藏着20万吨大米。用日本产的机械除去小石子和不良米,远送非洲和欧洲。
COO(首席运营官)斯梅斯?拉奥莫拉彭(音)说:“世界需要泰国的大米是因为品质卓越,所以,价格高照样销路很好。”
从1982年开始泰国大米的出口量就一直位居第一。2009年攀升到约900万吨,占世界贸易量的约30%。
日本因为94年大歉收而紧急进口泰国米。和短粒种的日本米不同,长粒种的泰国米因“香味浓郁”“酥”而为日本人所不喜,在大阪还发生了大量倾倒泰国米的事件。
但是,这种“香味”正是泰国米的优点。
名牌品种“红玛丽米(音)”是泰语“茉莉香的米”之意,世界上普遍称其为“茉莉香米”。这种米是在泰国东北部的呵叻高原贫瘠的土地上,限制水和肥料栽培出来的,甘甜且会释放芳香。
虽然其价格是位居出口第二的越南米的大约二倍,但作为长粒种的最高级品种,在中国南部和东南亚及南亚都很受喜爱。因为无法在价格上与正在快速增加出口量的越南和邻国柬埔寨、缅甸的廉价抗衡,所以,泰国米要依靠品质来竞争。
麻烦的是低价米的掺入与故意贴错标签。据说,从生产到中间商再到经销商,整个过程都有人这么做。
根据泰国农业部去年在中国的零售店做的大米DNA调查结果,以100%泰国产红玛丽米(音)的名义销售的商品327件中,被确证无其他品种混入的仅24件。
政府正采取积极措施,规定商家有义务标示出生产产地信息等,目的是建立一种“可追溯性”制度。因为“茉莉香米”这个名称也被越南和美国产的其他品种使用,因此,政府正致力于向欧盟申请注册“呵叻高原产红玛丽(音)米”这种原产地标示。
在08年全球粮食危机时,作为“全球品牌”的泰国米进一步凸显了它的地位。
这是因为在印度和越南等国提出限制大米的出口之时,泰国并没有缩减大米的出口。与大米的国内价格的上涨直接受政局不稳影响的国家相比,泰国经济在发展,生产力十分充足,有充分的余地。泰国大米生产的未来很可能影响全球粮食安全。
■佃农支撑大米商业 财富却没有降临农家
可以说泰国的大米商业支撑着世界。然而,农民却无法获得这份财富。
在离CP Intertrade的仓库很近的一个农村,一位67岁叫本丘?查那斯(音)的农民正扑倒在田边呼天抢地:“全都被吃光了!什么都没留下啊!”
在泰国中部的农村,去年来发生了严重的虫害。据本丘老汉说,224公亩的稻田平均收获量是13吨,但今年预计只有2吨的收成。“亏本啊!又要欠债了!看来,我不能再种稻了。”
一季歉收就会使佃农陷入窘境,因为他们必须支付租地费。据泰国农业经济局称,因为经济发展,泰国的平均年收入从2002年到2009年翻了一番,而农户农闲期外出干活的收入加起来也才达1.6倍。卖了土地成为佃户的农民骤增,其中的80%都有负债。
稻米局长普拉萨特?葛萨尔维特拉(音)说:“农业人口20年减少了一半。到城市打工更容易增加收入。特别是年轻一代对农业没有兴趣,这与日本等国是相同的。”
在曼谷,为了提高米价和寻求对种稻的补助,多次发生数百农民集结的示威游行。大量的农村选票也决定了5月即将举行的议会换届总选举。泰国农民协会副会长、74岁的威其恩 普安拉姆齐奥库(音)说:“我不认为泰国米会输给其他国家的米。但是,我也不认为离开政府的支持农民还能坚持种稻。”(古田大辅)
◇
(泰国米)长粒种的籼稻米。外观细长,煮熟不粘。食用时口感酥爽,适于做咖喱和抓饭。这种米也用于冲绳特产的一种烧酒。籼稻米在东南亚、中国南部、印度广泛栽培,在全球来看,食用范围比短粒种的粳稻米(日本米)更广。
|